- インタビュー
保険を選ぶ際、本当に大事なのは「売れ筋」「保険料の安さ」ではなく、自分に合っている保障を受けられるかどうか。
消費者側から見るだけではなく、商品開発側の視点に触れるのも自分に合う保険商品を探すきっかけになるのではないでしょうか。
今回はチューリッヒ生命(チューリッヒ生命保険株式会社)に直接お伺いし、執行役員(商品担当)兼 商品本部長の笠原吉家さんから保険商品が開発される背景や開発側ならではの着眼点、想いについてインタビューしました。
この記事の目次
チューリッヒ生命はお客さまを大切にする社風
保険業界を選んだ理由、チューリッヒ生命で働いている経緯を教えてください。
大学で専攻していた「確率論」が活きる仕事なのが決め手でした。
元々大学では数学(確率論)を専攻していて、「生命保険業界では確率論が使える仕事がある」と就職活動中に知ったのが始まりですね。
チューリッヒ生命は2社目で、転職したのが2012年。
社長の太田が「多くの新商品を開発して、ビジネスを拡大する」プロジェクトを実施していた時期で、ぜひ参画したいと転職を決意しました。
チューリッヒ生命はどんな会社ですか?
さまざまな観点からお客さまを大切にする会社だと感じます。
チューリッヒ生命は「お客さまにとってナンバーワンの存在になる」とのミッションを掲げています。
お客さまのナンバーワンになるために革新的な保険商品を提供し、お客さまのニーズに沿った複数のチャネル(媒体、経路)に対応し、高品質なサービスを維持し続けるのが当社の強みです。
実際に働いている側から見ても、ミッションの実現に向けて本気で動いている会社だと感じます。
保険商品の開発は地道な作業と計算・予測が基本
保険業界の商品開発は、どんなお仕事ですか?
将来のリスク(不確実性)を緻密に計算・予測し、保険料や約款の内容を考えています。
前提となる「どんな市場(マーケット)にどんな商品を提供するか」という考え方は他業界でも共通するものだと思われます。
保険業界特有の要素で言えば、不確実な事柄である「死亡」「入院」などを商品に落とし込む過程ではないでしょうか。
保険の契約は何十年も継続するので、私たちは何十年先のリスクについて「大まかに」ではなく、確率論やさまざまなデータをもとに精緻な計算・予測をしてから保険料を決めています。
必要なデータや資料が揃ったら、監督官庁である金融庁とのやり取りが開始します。
金融庁とのやり取りをする前に、全ての条件を決めてから確認を取るんですか?
全体像が固まった時点で、確認してもらっています。
保険商品は金融庁による認可が必要で、認可の取得には数ヵ月程度を要する場合があります。
この期間の中で非常に多くの確認事項があるので、「こういう商品を作りたい」「こういう保険料にしたい」とまずは全体像を持って行って、金融庁に確認してもらいます。
金融庁の中でも発生率などの確率論に基づいた資料を確認する方には、かつて保険会社で私たちと同じような業務をしていた方も多いです。
そういう意味ではお互い通じる部分も大きいので、直接会話をすることでこちらの意図が正確に伝わる場面もありますね。
確率論が専門とのことですが、要素を決めたら発生率などを計算するシステムがあるんですか?
クリック一つでデータが揃う…となれば理想ですが、さすがにそういうわけにはいきません。
すべてのデータが最初から綺麗に揃っているわけではないので、必要な発生率を出すためにはいくつかのステップが必要です。
色々なデータがばらばらに散らばっていたり、数字のデータだと思ったら突然途中にテキストのデータが入っていたり。
データがきれいに揃っていないと計算できなくなるので、一つ一つ潰してようやく集計が始まります…。
集計をする前の泥臭く地道な作業が、実はかなり大変ですね。ただ、将来のリスクを計算するためには、とても重要な作業です。
「お客さまの声」は商品開発に活きている
商品をリリースした後、お客さまから寄せられる要望は次以降の商品開発や改定に活かされていますか?
当社では、多くのお客さまの声が活かされています。
当社では定期的に(年2~3回)お客さまからの要望やお叱りの声、お褒めの言葉を商品ごとに分析し、社内の関係部門で共有しています。
お客さまご本人だけでなく、保険商品を販売する代理店の方々からも意見を集めるんです。
毎回、商品開発で次の商品を検討する際はいただいたご意見からスタートしています。
実際に「ここがこう変わった」事例を聞きたいです。
医療保険の「健康還付給付金」はお客さまの声が活きた事例です。
お客さまの声や代理店の皆さまからの声がなければ、「健康還付給付金」は実現しなかったと思います。
競合他社でもこの保障を提供している会社は多くはないのですが、チューリッヒ生命でやってほしいと要望がありまして。実際にご提供してみると好評でした。
これはお客さまや代理店の意見が反映された保障の代表例かと思います。
また、弊社は2015年から販売していた医療保険を2022年に大きく改定しました。
7年の間に新たに医療保険の市場に参入する会社もありましたし、競合他社は新しい保障を追加して競争が激しくなっていました。
そこで、最新のお客さまのニーズを反映したのが2022年に行った医療保険の改定ですね。
商品開発目線で見る「良い保険」とは
商品開発の目線で「これはすごい!」と思った他社商品はありますか?
「商品にするのは難しい」と思っていた内容が実現した商品ですね。
ずっとやりたくても実現できなかったアイデアを他社が実現させた時は「すごい!」と思いました。
社名は伏せるのですが、健康診断の結果を提出すると保険料が割引になる商品があるんですよ。
自分も含めて、アイデアを思いつく方はたくさんいると思うのですが、実際の申込プロセスに組み込もうとするとなかなかハードルが高くて。
自分では実現できなかったことを他社で商品化された時は悔しかったですが、本当にすごいと思っています。
逆に、他社を反面教師にしている部分はありますか?
特定の疾病に対する過度な給付金は避けたいと考えています。
保険は医療費や生活費の不足を埋めるものであって、「特定の病気になった人だけが得をする」状況はよろしくないですね。
当社はさまざまなオプション・特約を提供していますが、病気にかかった際などのお客さまの損失を最小限にするために全体のバランスを重視しています。
商品開発で非常に良いと思ったアイデアを却下された経験はありますか?
アイデア自体を却下された経験はほとんどありません。
プロセス化が難しかったり、システム上実現不可能だったりする商品は検討を進める段階で却下されますが、そうでなければ何らかの形で活きる機会は多いです。
ただ、「お客さまは何に困っていて、どういうニーズがあって、だから保険が必要」というストーリーがないと、独りよがりのアイデアになってしまうと思います。
保険は目に見えない商品だからこそ、お客さまがイメージしやすいストーリーが重要です。
商品を販売する上でも重視されるので、ストーリーを前提にアイデアを練り直すことはよくあります。
ご自身で開発した保険に加入していますか?「開発時に意図した通りの保障を受けられた」「意図とは違った」などの経験があればお聞きしたいです。
はい、加入しています。
私が加入したのは医療保険ですが、前提として「すべての人に100%合致する」保険は世の中に存在しないと思うんですよ。
もちろん私にとっても100%合致している商品ではありませんが、一度入院した際に給付金を請求し、医療費をカバーできる金額を受け取ることができました。
個人によって必要な保障や困りごとは異なりますが、最も大事なのは請求した給付金や保険金がスムーズに支払われることだと思うんです。
必要な給付金がきちんと支払われたので、意図していた保障を受けられたと考えています。
「約款」の理解と英語での資料作成が大きな壁
商品開発で大変だったエピソードを教えてください。
まず大変だったのは「約款」ですね。
約款はお客さまとの保険契約を約束する重要なもので、商品を作る上で約款の理解は必要なのですが、約款って言い回しが少し難しいですよね。
もちろん、わざと難しくしているのではなく、正確に記載するために必要なんです。
とはいえ、昔はかっこの中にかっこがあったり否定文の中に否定文があったり…。最近の約款は、昔に比べれば読みやすくなったと思います。
今はもう慣れましたが、私は長文の活字を読むのが得意な方ではなかったので大変でした。
英語も必要とお聞きしているのですが、英語は堪能なんですか?
前職では英語を使っていなかったので苦労しました。
当社の場合は親会社がスイスの保険会社なので、英語が必要になる機会もありますが、私は英語がまったく得意ではなく、今も苦労しています。
商品を発売する前に本社に説明をする資料を英語で作らなくてはいけないのですが、当然ながら資料作りのルールも英語で…。
保険の専門用語を英語でどう表現するか、最初はまったくわかりませんでした。
転職してすぐの頃に比べれば慣れましたが、もっと円滑にコミュニケーションができるようになりたいです。
海外と日本で「申込書」などの概念や内容に違いはありますか?
法律や医療・病院の事情による違いは大きいです。
海外の規制は専門外ですが、各国のお客様さまの特性や各国で販売されている商品の特性によって、求められるものが違うと思います。
また、法律や医療・病院の事情による違いも大きいです。
医療保険について海外の方に説明しようと思ったら、日本では基本的に全員健康保険に入っていて、だから医療費の自己負担はこれだけで…という前提から説明しなくては理解してもらえません。
我々にとっては常識でも、向こうにとってそうではないケースも多いんですね。
独りよがりにならないのが商品開発の基本
商品開発で嬉しかったエピソードはありますか?
自分が開発した商品が売れた時ですね。
世に出した商品が市場やお客さまに受け入れてもらえるのがやはり私にとって一番「楽しい」「嬉しい」瞬間ですね!
特に、前評判があまり良くなかったのにヒット商品になった時は最高に気持ちいい(笑)
実際に商品がローンチされた後、売れ行きがどうなるかは色々な要素が絡みますが、不確定だからこそ想定を上回る販売数が出た…そういう時が一番嬉しいです。
そこ以外だと「金融庁から認可をもらった」時ですね。長期間のやり取りを経てOKをもらえた瞬間なので、非常に嬉しいです。
売れやすい商品の傾向は決まっていますか?
「これが売れる」と言い切るのは難しいですね。
保険商品は検討し始めてから世に出るまで長期間かかってしまうので、市場がその間に変わる時もあります。
商品開発部門として「良い商品だ」と思っていても、市場に受け入れられるかはまた別ですし、独りよがりになってはいけません。
売れるかどうかは市場のタイミングもあって、想定より売れない商品も多いです。
お客さまに近いところにいる営業部門やオペレーターの方々と協力しながら、複数の商品を継続して発売していくのが重要だと思っています。
実現不可能でも「あったらいいな」と思う保険はありますか?
「花粉症保険」です。
点鼻薬の購入費を含む保障、鼻の粘膜を焼く手術に給付金、診断を受けたら10万円などの定額を給付…。
私自身が重度のスギ・ヒノキ花粉症患者なので、花粉症保険があれば本当に加入したいですが、実現は難しいと思います。
なぜかというと、仮にその商品があったら私は1月頃に加入して、4月終わり頃に解約するからです。
スギ・ヒノキの花粉症患者であれば、みなさん同じ行動をとるのではないでしょうか。だから商品として実現するのは難しいでしょうね。
需要が高く、社会的な課題にもなっていますが、残念ながら保険商品としては難しいテーマかなと思います。
多くのオプションが「終身医療保険プレミアムZ」の強み
「終身医療保険プレミアムZ」の特徴・長所を教えてください。
多くのオプションをニーズに合わせて選べるのが強みです。
非常に多くのオプションがあり、ご自身のニーズに合わせて自由設計で決められるのは最大の特徴ですね。
「医療保険」と聞いてお客さまがイメージする保障であれば、ほとんど当社で提供できると思います。
先ほどご紹介した「健康還付給付金」もおすすめです。
さまざまなニーズに対応できる商品なので、老若男女さまざまな方に加入していただきたいですね。
「売れ筋ではないけど実は良い」商品ってありますか?
就業不能保険「くらすプラスZ」ですね。
何が良いって、公的な障害年金制度に連動しているのもありますが、給付事由がわかりやすいんですよ。
「軽度の働けない状態」と「重度の働けない状態」で給付金が二段階に分かれていて、当社では短期の給付金と長期の給付金と呼んでいます。
長期の給付金については、一度お支払事由に該当したら保険期間が終わるまで、生存している限りずっと給付金が出るんです。給付金は復職した後もストップしません。
就業不能保険は医療保険ほどなじみがある商品ではないと思いますが、当社の「くらすプラスZ」はわかりやすいので、非常におすすめできる保険だと思います。
保険商品で最も重要なのはバランス感覚
今後商品開発を通じて取り組みたい事柄を教えてください。
「バランス感覚を失わずに商品を提供していく」ことですね。
保険商品って、リスクとリターンのバランスをどうやって取るかが大事なんです。
先ほどの花粉症保険の場合は、リスクとリターンのバランスが取れないのが問題です。
リスク・リターンの意味では保険料の水準も同じ関係にありますよね。
保障内容に見合った保険料の水準や、お客さまのニーズ・予算に合わせたプラン設定が重要です。
今までも取り組んで来たことですが、今後もバランスを意識して商品開発に臨みたいですね。
このインタビューを見ている方に一言あればお願いします。
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チューリッヒ生命はお客さまにとってナンバーワンの会社を目指しています。
保険を検討している方は安心して加入していただきたいので、不明点があればお気軽にコールセンターへお問い合わせください。
私たちは高品質なサービスの提供を会社全体で重視していますし、お客さまの声は今後の商品開発にも反映されます。
保険でお悩みの際は、ぜひ当社にご相談ください。